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クライアントは上司?フリーランスエンジニアの「自由」な意思決定とは

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会社員からフリーランスエンジニアへの転向を考える上で、最も大きな心配ごとのひとつに クライアントとの人間関係 が挙げられると思います。

「上司がクライアントに変わっただけ」という言葉を耳にすることもあるように、いくらフリーランスエンジニアになって上司のいない自由な立場を手に入れたとしても、結局はクライアントの顔色をうかがいながら仕事をしなければならず、状況はさほど変わらないのではないか、という不安を持っている方が少なからずいるのではないでしょうか。

しかし、会社員にとっての上司と、フリーランスエンジニアにとってのクライアントでは決定的に違う点がひとつ存在します。それが、「フリーランスエンジニアとクライアントは対等である」という点です。

この記事では、クライアントとの適切な接し方について考えることで、フリーランスエンジニアとして楽しく仕事を続けられる方法について考えてみたいと思います。

組織における「一貫性」の重要性

そもそも、なぜ会社では上司の意思決定に従わなければならないかを考えてみましょう。

大前提として、会社は組織です。会社という組織が、ビジネスにおいて成果を最大化するために最も重要な要素のひとつが「一貫性」であると私は考えています。

ビジネスには絶対的な「正解」は存在しません。何をどうすれば成功するのか、どんな商品を提供すれば顧客はお金を出してくれるのか、どんな戦略をたてれば事業は成長できるのか——。組織のトップは、どれが正解なのか誰もわからない中で、意思決定をして組織を動かさなければなりません。

例えば「うちの会社は利益の上がらない案件でも受注する。数をこなすことで蓄積するノウハウで、他社との差別化を図る」というのもひとつの戦略です。組織のトップがひとたびこのような戦略をたてたら、組織に所属するすべてのメンバーがこの方針を尊重し、その効果を最大化するように行動することが求められます。

「利益の上がらない案件でも受注する」ということは、その組織に所属するエンジニアとしては、赤字を抑えるためになるべく低コストで案件をこなす工夫(例えば作業の自動化や仕様の調整など)が必要になります。

営業部門のメンバーは、他社が敬遠するような利益率が低い案件を狙って受注するような戦術も求められるでしょう。将来的に「ノウハウの蓄積」を武器とする方針であれば、ひとつひとつの案件で得られたノウハウを、ドキュメントとしてまとめることも意識的に行う必要があります。

ここで誰かが「いや、利益率の低い案件を受注したって現場が疲弊するだけだ。自分は利益率の高い案件だけを受注する」と、独自の考えで動いてしまうとどうなるでしょうか。

当然のことですが、利益率の低い案件を数多く受注するためのノウハウと、少数の利益率の高い案件に絞って確実に受注するためのノウハウは異なるはずです。やり方の違うメンバー同士ではノウハウの共有もできず、業務の共通化もできません。また、それぞれ方針の異なる案件に付き合わなければならないエンジニアや、ほかの部署のメンバーにも混乱を生じさせてしまいます。

このような状況は、非効率と混乱により、ビジネスにおける失敗のリスクを高めます。

会社が組織である以上、そのトップが決めた戦略を大前提として、各部門、各部署、各プロジェクト、各メンバーが自分の目標に落とし込んで行動することで「一貫性」が生まれ、組織としての成功が実現します。まさにそれこそが、組織において「上司の意思決定に従わなければならない」理由であると言えるでしょう。

個人事業主における「一貫性」

では個人事業主であるフリーランスエンジニアの場合はどうでしょうか。

事業の成功のためには行動の「一貫性」が大事であるという点は、会社の場合と同じと考えられるものの、会社という「組織」と違い、フリーランスエンジニアは「個人」です。つまり、自分が立てた戦略を実行するのは自分です。

どのような戦略を立て、どのように実行し、どのような言動をとるのかはすべて自分次第です。それによる成功も失敗も、すべての責任をとるのは「事業主」である自分自身です。組織のトップという「自分ではない誰か」が考えた方針に従うのではなく、「自分」が考えた方針に従って行動できる、という点でフリーランスエンジニアは「自由」であるといえます。

これはクライアントとの接し方においても同様です。クライアントの要求に対し、自分はどのように言動するのかを決めるのは自分の戦略次第です。

例えば理不尽な要求に対して毅然と拒否するのもひとつの戦略です。すべての要求を受け入れ、自分のできる最大限の仕事をするのもまたひとつの戦略です。無理せず常に余裕を残した仕事をするのもまた戦略でしょう。

自分の望む人生を実現するための戦略を考え、実行し、それを自らの手で現実にする選択肢がフリーランスエンジニアにはあるといっても過言ではありません。

「クライアント」は「上司」?

さて、ここまでの話を踏まえると、最初の疑問の答えは明確なのではないでしょうか。

フリーランスにとってのクライアントと、会社員にとっての上司は同じなのか——。答えは当然「ノー」です。

戦略を同じくするひとつの組織に所属し、明確な指示系統や上下関係のある上司・部下の関係とは異なり、フリーランスエンジニアにとってのクライアントとは、身も蓋もない表現をすると「利害関係の一致した商売相手」以外の何者でもありません。

フリーランスエンジニアは、技術を提供することでクライアントから報酬を得ることができ、クライアントは報酬を支払うことで自分のビジネスを実現できます。技術とお金を交換するこのようなシンプルな関係には上も下もありません。

クライアントの意向だからといって、すべてに従う必要はないのです。
クライアントに従えなければ、契約を解消して考え方の一致する別のクライアントを探す自由があります。※1

対等な会話がプロダクトをよりよいものにする

フリーランスエンジニアとクライアントの関係において、意見が合わなかった場合の選択肢は、契約を解消するだけではありません。

先ほど説明した通り、フリーランスエンジニアは「社員」ではありませんので、クライアントの組織としての方針に従う必要はありません。むしろ「外部の専門家」として、組織の戦略をよりよいものにするための意見を期待される立場でもあります。
フリーランスエンジニアに仕事を依頼するということは、クライアントの組織内の人員だけではそのシステムを完成させられない、またはビジネスを実現することができないリスクがある、ということです。だからこそ、クライアントは不足する戦力を外部の専門知識や経験を持った人材に求めます。

そのことを考えると、フリーランスエンジニアの「専門知識や経験を持った人材」としての意見は、クライアントにとってプラスになることも少なくありません。
プロダクトをよりよい形で実現することで、ビジネスの成功率は高まります。ビジネスが成功すれば、当然クライアントが得られる利益は大きくなり、それによってフリーランスエンジニアに支払える報酬や条件もよりよいものになります。このことは前の記事でも少しふれていますので、興味があればぜひ読んでみてください。

1杯1000円のコーヒーから考えるフリーランスエンジニアの価値

システム開発の知識を持ったフリーランスエンジニアと、ビジネスのアイデアを持ったクライアントが対等に意見を交換しながら、プロダクトをより高い品質で実現する。これが両者の利益につながるということを理解していれば、「どちらが上か」を考えることが、いかに無意味であることがわかるのではないでしょうか。

「クライアントの意見に従わなければならない」、「クライアントは上司と変わらない」という内向きの発想ではなく、「自分の意見を発信することでユーザーによりよい商品を提供し、ビジネスの成功に貢献する」という外向きの発想で対等に議論をすることが、お互いのためになると考えています。

まとめ

フリーランスエンジニアは組織に所属する会社員と違い、自分の戦略に基づいて、意思決定ができる、という点で「自由」であるといえます。クライアントと意見が食い違った場合でも、それに従う必要はないわけです。
むしろ、「システム開発の専門家」としての自分の意見やアイデアをクライアントに共有することで、クライアントのビジネスの成功に貢献し、お互いにとってよりよい状況を作り出すことにつながるでしょう。

一方で、そのような「お互いにとってよりよい状況」が見込めなければ、契約を終了しほかのクライアントを探すのもやはり自分の意思決定次第です。

ただし、フリーランスに転向したばかりのエンジニアにとって仕事のツテが多くあるわけでもなく、世の中にはどのようなクライアントがどのような考え方を持っているのか、どのようなビジネスが存在するのか、などを把握することは困難です。

そのような場合は、エンジニアファーストなどの案件紹介サービスを利用し、エージェントを通じてさまざまなクライアントと「対等に」会話する機会を増やしてみてはいかがでしょうか。自分の視野を広げ、自分ならではの戦略の確立につなげられるはずです。

まずは「クライアントは上司のようなもの」というイメージを取り払い、対等なビジネスパートナーとして、お互いにとってよい結果になるコミュニーケーションを心がけてみることで、より楽しいフリーランスエンジニア生活に近づけるでしょう。



※1 当然、契約を解消した結果「考え方の一致する」新しいクライアントがすぐに見つかるとは限りません。その辺りの見切りも含めて自分の意思決定と責任であると言えるでしょう。

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中條 剛(ちゅーやん)

中條 剛(ちゅーやん)

フリーランスのアプリ開発者。Flutter によるアプリ開発を中心に、企業向け研修の講師、教材作成、メンターなどをしています。技術記事は "how to use" よりも "how it works" を意識して書いています。