1杯1000円のコーヒーから考えるフリーランスエンジニアの価値

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世の中には1杯1,000円でコーヒーを提供するカフェが存在します。

これは街中でよく見る一般的なカフェと比べて2倍も3倍もする値段設定ですが、なぜそれだけのお金を出してまで「お高い」カフェを利用する人がいるのでしょうか。

この記事では、そんな1杯1,000円のコーヒーが生み出す価値について考えることで、フリーランスエンジニアがより良い条件で働けるようになるためのアイデアについて考えていきたいと思います。

1杯1,000円のコーヒーが生み出す価値

どのようなものであれ、人が何かにお金を出すということは、そこに何かしらの「価値」を見いだしているということです。

では、先ほどの「1杯1,000円のコーヒー」を買う人は、そこにどのような価値を見いだしているのでしょうか。それを考える前に、まずはそのコーヒーを提供するカフェの「特徴」をざっと考えてみましょう。

  • 味がいい
  • 落ち着いている雰囲気がいい
  • 高級感が感じられる


といったところでしょうか。

ではもう一歩深堀りをして、これらの特徴から生み出される「価値」について考えてみましょう。

「落ち着いている雰囲気がいい」という特徴からは、以下のような価値が生まれます。

  • 仕事や勉強などの作業がはかどる
  • 周りに邪魔されずに会話を楽しめる
  • ほかのことを忘れてリラックスできる


さらに深く考えを進めてみると、「作業がはかどる」ことによって時間あたりの成果を増やすことができ、それが評価や報酬などの結果につながるかもしれません。

「会話が楽しめる」ことは、相手との関係性をより良いものにしてくれるでしょう。リラックスは健康と次の活動への活力を与えます。

これらは、入れ替わり立ち替わりコーヒーを頼んでいく1杯数百円程度の賑やかなカフェでは得られない価値です。(※1)

カフェでの仕事から価値を考える

フリーランスエンジニアが提供する価値

では視点を変えて、フリーランスエンジニアが契約先の企業に対して提供できる「価値」について考えてみましょう。

フリーランスエンジニアに求められるものとして、一般的によく言われるのが「高い技術力」だと思います。しかし、この「高い技術力」は、カフェの「落ち着いている雰囲気がいい」と同じで、単なる「特徴」に過ぎないのです。その特徴から生み出される価値は別のところにあります。それを考えてみましょう。

高い技術力によって生み出される価値にはどのようなものがあるでしょうか。私は以下のように考えます。

  • バグが少なく、動作が軽快で高品質なソフトウェアが提供できる
  • 素早い開発によってスピーディにビジネスアイデアを実現できる
  • 適切な技術選定により、変化に強くメンテナンス性の高いシステムが構築できる


などなど、どれもソフトウェアでビジネスを続ける上では欠かせない価値です。

ただし、すべてのフリーランスエンジニアが、「高い技術力」という特徴を持っていなければならないのかというと、そうではないと考えています。

繰り返しですが、「高い技術力」はあくまで「特徴」のひとつです。ほかにもフリーランスエンジニアが持ちうる特徴は、さまざまなものがあります。例えば、

  • 非エンジニアに対しても円滑に意思疎通ができるコミュニケーション力
  • 勉強会やインターネットで、ビジネスの価値や技術的な優位性を発信できる力
  • 正確な工数見積もりができ、進捗や課題について適切な報告ができる管理能力


など、「ソフトウェア開発技術に精通している」という意味での「技術力」とはまた別の特徴が、さまざまな価値を生み出します。

高いコミュニケーション力があれば、ビジネスサイドとエンジニアサイドの認識齟齬を減らし、予期せぬトラブルや対立を回避できるでしょう。発信力があれば、新たなエンジニアを引き入れたり、顧客への説明がスムーズになったりするかもしれません。また、正確な見積もりや報告は、プロジェクトマネージャーにとって現状を正確に把握し、必要に応じて軌道修正をするためのとても重要な検討材料になります。

これらの特徴すべてをひとりで持つことは現実的にとても難しいことです。だからこそプロジェクトは「チーム」としてさまざまな特徴を持ったメンバーを集め、それぞれのメンバーから「価値」が生み出されることを期待します。言い換えると、全員が全員「高い技術力」を持っているからといってプロジェクトが成功するとは限らないのです。

チームでの力を発揮する価値が求められる場合も

フリーランスエンジニアがより良い条件で働くためのアイデア

さて、ここまでを踏まえて、この記事の本題であるフリーランスエンジニアがより良い条件で働けるようになるためのアイデアについて考えていきましょう。

ここまで考えてきた通り、フリーランスエンジニアに必要なのは「高い技術力」に限りません。「コミュニケーション能力」にも限りませんし、「人脈の広さ」にも限りません。あらゆる特徴が企業にとっての価値になり得るもので、「コレさえあれば大丈夫!」も「コレがないとダメ」もありません。

大切なのは、「自分がどのような特徴を持っているか、それによってどのような価値を企業に与えることができるかを理解すること」だと考えています。就職活動用語でいう「自己分析」といったところでしょうか。

技術力やコミュニケーション力だけでなく、人柄、性格、趣味嗜好、興味関心、時には年齢や血液型まで、あらゆる特徴から価値は生まれます。ひとつひとつの特徴に対して「コレは開発には関係ないな」と切り捨てるのではなく、「どんな特徴からも価値が生まれる」ことを前提に、自分が持つあらゆる特徴について、それがどのような価値を生み出すのかを考えてみましょう。

ここで忘れてはならないのが、「その価値を必要とするのは、どのような企業のどのようなプロジェクトなのか」も一緒に考えることです。

例えば、すでにサービスがリリースされていて、ビジネスの拡大を目指すフェーズにいるプロジェクトと、まだアイデアが頭にあるのみで、エンジニアがひとりもいないフェーズのプロジェクトでは、フリーランスエンジニアに求められる価値は異なります。

そのサービスのユーザーが企業なのか、一般消費者なのか、もしくはほかのエンジニアなのかによっても変わるでしょう。

世の中にどのようなプロジェクトが存在するのか、それぞれのプロジェクトがどのような価値を必要としているのかを、自己分析とセットで考えておく必要があります。これはフリーランスになった後も継続的に考え続けるといいでしょう。

最後にもうひとつ重要なのが、「その価値にいくらの値段がつくか」という点です。

最初のコーヒーの例では、落ち着いた空間で提供される1杯のコーヒーと、そこから生み出されるさまざまな価値に「1,000円」という値段がついていました。フリーランスエンジニアにとっては、このような価値に対して支払われるお金が「報酬」になります。

報酬というと、「PHP歴何年でいくら」といった技術と経験年数で自動的に決まるもののようなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際はまったくそのようなことはありません。

現実問題として、各フリーランスエンジニアがどのような価値を提供してくれるかを見極めるには、時間的にも金銭的にもコストがかかります。そのため、分かりやすい指標に、分かりやすい値段をつけてそれを「相場」と呼ぶことも多いです。ただし、その相場にどれだけ依存するかは企業の考え方次第なのです。

ひとりひとりじっくりと特徴と価値を見極めたい企業にとっては、相場は参考程度に、その価値にいくらの値段を支払えるかを基準に報酬金額を決定します。

そして、この「いくらの値段で支払えるか」を決める要因は、どれだけ緊急で人材を必要としているか、ほかにアテはあるのか、予算に余裕はあるのか、などの状況によってさまざまであることも忘れてはいけません。

1杯1,000円のコーヒーも、周辺にカフェがなければ利用されやすく、逆に同じような場がほかにあれば検討の末に利用されないことも増えるでしょう。

言い換えれば、提供する価値は同じでも、その適正な値段は受け手次第なのです。

このことはコンビニや飲食店での消費活動が多い一般消費者の目線では忘れられがちなのですが、「適正な価格」は一定ではありません。

例えば企業間の売買において、最終的な金額はお互いの話し合い次第です。売り手は要件に応じた見積もりを出し、買い手はその内容を見て削れる部分は削ったり、相見積もりをとって比較したりして金額を調整し、最終的に合意に至った値段で契約します。最初から商品に値札がついて並んでいるわけではありません。

フリーランスエンジニアにとっての報酬額も同じです。報酬額や条件は相場や工数から機械的に算出するものではなく、常にお互いの合意によって決定します。その際、より良い条件で合意を得るために「自分はどのような価値を提供できるか」、「相手はどのような価値をどれだけ必要としているか」を把握するのが大事になる、というわけです。「己を知り敵を知れば百戦危うからず」のことわざの通りですね。

もし自分の価値と相手の求める価値が合致しなければ、話を白紙に戻して別の案件を探せばいいでしょう。無理に譲歩して契約しても、参加したときに思うような成果が出せずお互いに損をするリスクが高まることを考えれば、白紙撤回を「悪い」ことと思う必要はありません。何よりそのような判断を自分でしていけるのがフリーランスエンジニアの面白いところだと思います。

まとめ

繰り返しですが、企業が必要としているフリーランスエンジニアの「価値」とは「高い技術力」そのものではなく、それを含むさまざまな特徴から生み出される「価値」です。そして、どのような特徴からも「価値」が生み出される可能性があること、どの価値にどれだけの値段がつくかは相手の企業次第であることも忘れてはいけません。

報酬額をはじめとしたさまざまな条件は、機械的に決めたり誰かに決められたりするものではありません。フリーランスエンジニアと企業が、お互いにとってより良い条件で契約できることを目標に、自己分析をしたり、身の回りのサービスが生み出す価値を観察したりしてみるといいでしょう。(※2)その積み重ねこそが、自分のフリーランスエンジニア生活をより良いものにしてくれるはずです。

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※1: 間違えてはいけないのは、このような「1杯数百円のコーヒーを提供するお店」も同じように「1杯1,000円のコーヒー」にはない価値を生み出しているという点です。それは何か、考えてみるといいでしょう。

※2: 例えば多くのフリーランスエンジニアが利用する案件紹介サービスが生み出す価値はなんでしょうか。その価値に対していくらの値段がつけられているでしょうか。考えてみましょう。

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中條 剛(ちゅーやん)

中條 剛(ちゅーやん)

フリーランスのアプリ開発者。Flutter によるアプリ開発を中心に、企業向け研修の講師、教材作成、メンターなどをしています。技術記事は "how to use" よりも "how it works" を意識して書いています。