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【ITエンジニア初心者必読】オンプレミスとクラウドの違いについて解説
はじめに
インフラエンジニアとしてサーバ関連の業務をするときにオンプレミスとクラウドという言葉が必ず出てきます。今回はそんなオンプレミスとクラウドの違いについて説明します。
オンプレミスとは
オンプレミス(On-Premises)の「Premises」は「Premise」の複数形で家屋、建物、構内、店内などを指します。語頭に「On」がつくことで「敷地内で」という意味になります。IT業界ではシステム構築に必要なサーバなどを自社内やデータセンタに設置して運用することを指します。オンプレミスのことをオンプレと略すことが比較的多いです。オンプレミスという言葉はクラウドの対義語として用いられます。クラウドが普及してきた2007年くらいからクラウドと区別するために使われています。
クラウド(クラウドコンピューティング)とは
クラウド(Cloud)とは英語で「雲」「雲状のもの」を意味する言葉ですが、なぜ「クラウド」と呼ぶようになったのかについては諸説あります。技術者がシステムの構成図を作成する際に「雲(クラウド)」のマークで表していたという説や実際に見えないものを利用している「雲の上」という意味で表現されたという説もあります。クラウドという概念は、1997年に南カリフォルニア大学教授のラムナト・チェラッパにより提唱されたそうです。しかし、この時はまだ普及しませんでした。2006年、当時アメリカGoogleのCEOを務めていたエリック・シュミットが会議でクラウドという言葉を用いてからクラウドという言葉が普及しました。
オンプレミスとクラウドの違いとは
オンプレミスとクラウドの違いを比較表にまとめました。
次に比較表の各項目について詳しく書いていきます。
初期費用
オンプレミスの場合、サーバやネットワーク機器などのハードウェアの購入、ソフトウェアの購入やライセンスの購入が必要です。そのため設計の段階からどういったシステム構成にするか、予算はどのくらいかなど細かい内容まで詰めておく必要があります。またシステムを拡張する場合は追加予算がかかるためその点も考慮漏れがないように注意してください。そのため機器の選定は慎重に行う必要があります。
クラウドの場合、初期費用がかからないものがほとんどです。初期費用がかかるとしてもオンプレミスと比べると比較的安い料金で利用することができます。またシステムを拡張する場合でも初期費用はそこまでかからないものがほとんどです。
月額費用
オンプレミスの場合、月額費用は基本的には固定となります。内訳として運用保守を業者へ依頼する場合はその運用保守費用、自社で保守する場合はその費用がかかります。またデータセンタに機器を設置する場合はそのレンタル費用もかかります。
クラウドの場合、利用した分だけ支払うため月額料金は月によって変動することがほとんどです。そのため費用の概算が出しやすいです。
利用開始までにかかる期間
オンプレミスの場合、機器の調達、設計から運用までに数週間から数か月以上かかることもあるので比較的利用開始まで長期間要します。データセンタに機器を設置する場合は設置するラックの予約や電源容量の設計、工事依頼等も含むのでさらに時間がかかることもあります。
クラウドの場合、アカウント作成後すぐに利用できることがほとんどなので短期間で利用開始することができます。
カスタマイズ
オンプレミスの場合、ハードウェアとソフトウェアを自社で調達するため自由自在にカスタマイズが可能です。
クラウドの場合、クラウドサービスで提供しているハードウェアとソフトウェアを利用するためカスタマイズできる範囲が限られます。
セキュリティ
オンプレミスの場合、自社で機器の管理場所を選ぶことができること、ネットワーク環境を閉域にすることで外部からの通信を遮断できるのでセキュリティは高くなります。
クラウドの場合、データの種類によってパブリッククラウド(インターネットを経由して誰もが手軽に利用できるクラウド)やプライベートクラウド(特定の企業や組織の中だけで独自に利用するクラウド)を使い分ければセキュリティは高くなります。またパブリッククラウドは外部からの攻撃を受ける可能性があるのでセキュリティは低くなりますが、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)の認証を受けているクラウドサービスであればセキュリティが懸念となることは少なくなると思います。
耐障害性
オンプレミスでデータセンタを利用する場合は停電・災害対策がされているため耐障害性
が高いです。自社に機器を設置する場合は停電・災害対策をしないと耐障害性が低くなります。
クラウドの場合、クラウド事業者がすべて管理しているため耐障害性は高いです。また復旧も容易に行えます。
まとめ
ここまでオンプレミスとクラウドの違いについて書きましたが、セキュリティを除けばどちらが優れているかということはなく利用方法によって適宜検討しておく必要があります。
日本政府は2018年6月にクラウド・バイ・デフォルト原則という、クラウドサービスの利用を第一候補として、その検討を行うことを発表しています。またデジタル庁は日本政府の共通クラウド基盤「ガバメントクラウド」としてセキュリティや業務継続性など350の項目を満たした「Amazon Web Services」と「Google Cloud Platform」を選びました。今後、各省庁や自治体の新システムや既存システムの移行先はクラウドサービスとなることが増えると予想されています。
その一方で海外の企業などではクラウドへ移行したシステムをオンプレミスへ戻す動きがあります。その背景にはクラウドサービス事業者側での設定ミスによる情報流出や膨大なデータを保存するためにかかる利用料の削減、システムの動作遅延などがあります。
また下記のように最近では2台以上のサーバを1台のサーバに集約するP2V(Physical to Virtual)という技術もあります。
このように単純にオンプレミスからクラウドへ移行するものもある一方でP2Vのように集約して仮想化したり、オンプレミス環境を一部クラウドへ移行し、クラウドとオンプレミスの両方を利用するハイブリッド型などもあります。オンプレミスとクラウドをうまく使い分けることができれば安全で快適なシステムを構築することができると思います。
安部 真浩
ネットワーク系エンジニアとして案件をこなしつつ、ライターとして執筆活動にもチェレンジ中。株式会社グラントホープ所属のフリーランスエンジニア。趣味は貯金でFIREを目指しています!